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■新たなる相棒 災害復興プロジェクトの第一ステージ「見守り編」で、不自由な車イス生活の中で、患者としては十分すぎるほどの経験値(HP)を獲得した私は、新たなる相棒 マツバの杖 を手に入れ次なるステージ「自立編」へとレベルアップしました。杖を手に入れたといっても「体力を回復する」とか「怪我をなおす」とかの魔法は使えません。リハビリ室では強敵たちが息をひそめて待ち構えています。動きは遅いが怪力の「ヒザマゲキ」(得意技:機械的に人のひざを曲げること)や、仁王立ちでビクともせず、ありえない角度でかかとを固定する 「アキレスガタメ」 (得意技:相手に無理な体勢をとらせること。はがいじめ)など、これらボスキャラ達との戦いに勝たなければなりません。 杖(ステッキ)にはいろんな種類があるようです。歩行を補助するものはもちろん、視覚の不自由な人が持つ白い杖、マジシャンがハトを出したり、オーケストラの指揮棒(タクト)もこの杖(ステッキ)に由来するそう。中でも松葉杖というのは、ハタから見ると、どうしても「重症患者」のイメージが付きまとってしまい、周りの同情を引いてしまいます。そのままのかっこで学校なんかに行くと、何日間かは話題の人になりますし(3日目くらいから飽きられはしますが・・・)、街の中を歩いても人目をひく存在になってしまいます。歩行者信号の点滅にあせり、松葉杖を両脇に抱えて横断歩道を走っていったというコントのような光景を思いだします。 ところで、なぜ松葉杖と言われるようになったのでしょうか?それはその形に由来しているようです。松葉杖というと杖が途中で2つに分かれていますが、その形が松の葉に似ているからだそうで、昔のものは木製だったこともあり、イメージ的にも近かったのでしょう。今回お世話になるのは強度も増し軽量化したアルミ製の松葉杖です。左足に全体重をかけられるようになるまではお世話になるので、車イスよりも長い付き合いになりそうです。 ■Global standard この松葉杖は、ダボ調整で全体の長さや握り手の位置を変えて使用します。使う人の体型に合わせたり、病状や体の状態によって長さの調整をします。使いやすく調整しても、初めはなかなかうまく扱えませんでした。体重の大部分を支えるため、脇は痛くなるし、手のひらにはタコができたりもします。はじめは足に荷重をかけられない状態(免荷)なので床に足がつかないように杖を長めに調整しますが、この時の杖の制御がなかなかうまくいきません。私も使い始めの頃は、よく杖の先端が床にぶつかりこけそうになっていました。何故ぶつかってしまうのかというと、これには理由があったのです。 実は松葉杖の先端の軌道は、はさんだ脇の部分を中心にして鉛直方向に円弧を描くように動くので、まっすぐ杖を出してしまうと当然先端は床にぶつかってしまいます。私もこれには少しばかり苦労をしました。それではこれを解消するにはどうすればいいのでしょうか?これにはちょっとしたコツがあったのです。とあるセラピストに助言されました。 『杖の先端で床に(  )「かっこ・かっことじ」を描きながら歩いてみてください。』 『どうですか、歩きやすいでしょう?』 うん、確かに歩きやすくはなりました。が、なにかしっくりいかないというか、物足りない感じです。そこで、すこしアレンジすることにしました。この手の動き、アシを踏むリズム、そうアレにぴったりです。 『ぼん、きゅっ、ぼん。』 こうつぶやきながらでも効果はまったく変わりません。かえってリズムがついて軽快に杖が前へと進みます。つまり、体から離れるように先端をふくらませて動かすと先端が床にぶつかることなく歩くことができるというわけなんです。これが松葉杖の基本形なのです。 『ぼん、きゅっ、ぼん。』 しかし、実際にこの基本形で歩いてみると意外と横幅がいることに気づきませんか?幅の狭い廊下や階段、扉などはとても歩きづらく感じられます。例えば設計の段階で「ここの扉の幅はどれくらいにしようか?」といった時、よく車イスが通れるかどうかで判断されがちですが、実は松葉杖の方が広く必要な場合もあるっていうこと、なかなかコレ気づきませんよね~。 ■目からウロコのバリアフリー また、松葉杖使用者は車イスと違っていつも付添いがあるわけではなく、「ひとりでできるもん」意識が強く、ある程度単独で動くため、かえって不便に感じることが多くあります。杖を持っているために、両手が塞がって何か物をもっての移動ができませんし、扉の開閉など手を使う動作も意外と苦労します。杖を脇に挟んでいるためどうしても脇の位置が固定されてしまい、手の使える範囲、特に下向きの範囲が制限されてしまいます。例えば、扉のノブやEVの乗降ボタン等が低い位置にある場合には、そのままでは手が届かないことがあります。これは、建築設計では主に車イス利用者が使いやすいように設計されることが多いため、例えば、多目的WCのサムターンは車イスから使いやすいよう低い位置に設計されますが、この高さでは松葉杖をしたままでは手が届かず、いったん杖をはずさなければ施開錠できません。片足で直立のまま松葉杖をはずすという行為はバランスを崩しやすくとても危険なので患者としては細心の注意を払わなければなりません。このような動作の及ぶ範囲は、何が何でも車イスのためにという強迫観念とらわれるのではなく、松葉杖でも車イスでも手の届く所に集中させる必要があるようですね・・・。